Chapter 4-4:

パーキンソン病薬の調整方法

この記事でわかること

  • 「少量から始めて、ゆっくり増やす(漸増法)」が基本となる理由
  • 薬の増量や種類の変更を、一度に一つだけに限定する理由
  • 5年後・10年後を見据えた長期的な薬の調整の考え方


【前回のまとめと今回のテーマ】
前回は、お薬ごとに現れる副作用の特徴や、副作用の現れ方には個人差があることについて確認しました。

今回は、実際にどうやってお薬の種類や量を決めていくのか、その「調整」がテーマです。パーキンソン病のお薬は、飲み始めてすぐに満点の結果は出ません。なぜ調整に時間がかかるのか、その理由から見ていきましょう。

パーキンソン病にはたくさんのお薬があって、それぞれ特徴的な効用と副作用があるんだね。
それに反応の現れ方は、患者さん毎に違うのか。
適切な薬の組み合わせ見つけるのは大変そうだね。
本当に、その通りだね。
さらに言うと、お薬の「種類」の組み合わせだけでなく、それぞれのお薬を「どれくらいの量」飲むかも、とても重要なポイントなんだ。
量が少ない時は効果が見られないけど、一定量を超えると効果が現れることもあるんだよ。
だからといって、一気に量を増やすこともできないの。
量を増やすと、それだけ副作用のリスクが高まってしまうから。
まずは少量から始めて、体の反応をじっくり確認しながら調整していく必要があるの。
さらに大切なのは、一度にいくつも変えないこと。
「どの薬で、どんな良い影響や副作用が出たか」を正確に見極めるために、薬の量を増減する、または新たな薬を追加するときは必ず変更点を1つに絞る。これが調整するための近道なんだよ。

長期治療を支える「お薬の調整ルール」

いかに副作用を抑え、長期にわたって効果を維持するか。そのために守るべき3つの鉄則があります。

漸増法ぜんぞうほう:少量からゆっくり

「少量から始めて、ゆっくり増やす」のが基本です。

  • 副作用を未然に防ぐ:
    吐き気や立ちくらみなどは、急激な増量で起こりやすくなります。脳と体が薬に慣れるのを待ちながら、少しずつステップアップします。
  • 最適量(スイートスポット)を見極める:
    必要最小限の量で最大限の効果が得られるポイントを慎重に探ります。

一度に複数を変えない

薬の種類を変えるときも、量を増やすときも、必ず「一つずつ」行います。これには大切な理由があります。

  • 【理由】影響を見極めるため:
    一度に複数を変えてしまうと、体調が変わった時に「どのお薬が効いたのか(または副作用を出したのか)」がわからなくなるからです。
  • 【見通し】数ヶ月単位で構える:
    一つ変えては数日様子を見る、という手順を繰り返します。理想の組み合わせを見つけるためには数ヶ月かかるのが一般的なので、焦らず取り組みましょう。

将来の「伸びしろ」を残す

現在の医療ではパーキンソン病を完全に治すことは難しく、病気と長く付き合っていく必要があります。
だからこそ、5年、10年先のお体の状態を見据えた、長期的な治療戦略を立てていくことが大切になります。

  • 運動合併症の予防:
    将来、勝手に体が動く「ジスキネジア」などのトラブルが出にくくなるよう、若年の方ではあえてL-ドパを温存し、他の薬から始めることもあります。
  • 「今」だけを見ない:
    現在の症状を100%消し去ろうとして無理に増量するのではなく、長期的な生活の質(QOL)を優先します。
症状の個人差について自己判断は厳禁です。

お薬の調整において、「自分の判断で量を加減したり、服用を止めたりすること」は最も危険な行為です。
特に急な中断は、高熱や筋肉の激しいこわばり、意識障害などを伴う「悪性症候群」という命に関わる重篤な状態を招く恐れがあります。「効かない気がする」「副作用が怖い」と感じた時は、必ず主治医に相談し、指示の下で調整を行う必要があります。

「ゆっくり増やす」のも「一つずつ変える」のも、全部ちゃんと理由があるんだね。
焦って一気に解決しようとするのが、一番危ないんだ。
その通り。だからこそ、お薬を飲んでからの「体の変化」を教えてもらえることが、僕たち医師にとって一番の判断材料になるんだよ。
「いつ飲んで、いつ調子が良くなったか」を記録し、主治医と共有する。
患者さんにとっては手間のかかることなんだけど、非常に大切なことなの。
長期にわたって薬を服用すると、症状に変化も現れるんだ。その手掛かりを知る術にもなるしね。
同じ薬を飲んでるのに、長く飲み続けることで、効き方が変わってしまうのか。
なんとなく、わかる気がする。体は常に変化していくんだね。
そうなんだ。この症状の変化は個人により大小差はあるけど、治療を長く続ける上で避けては通れないんだ。次は、その長期服用による変化について詳しく見ていこう。

ポイント:パーキンソン病薬の調整方法

サマリ装飾イラスト

  • 少量からゆっくり
    薬の最適量を見極めるために、少量からはじめ、ゆっくりと増やしていきます。
  • 「一つずつ」変える
    お薬の種類や量を変えるときは必ず「一つずつ」行います。何が体に合っているかを見極めるための、大切なルールです。
  • 将来の「伸びしろ」を残す
    今現在の症状をゼロにすることだけを急がず、5年、10年先も効果を維持できるよう、将来を見据えた戦略を立てます。
※本サイトは情報提供を目的としています。実際の診断や治療は専門の医療機関にご相談下さい。

参考文献 (References)

  1. 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018

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