Chapter 2-1:

脳の内部構造と役割

この記事でわかること

  • 脳の表層と深部の機能的な違い
  • 大脳(表層・深部)、小脳、間脳、脳幹という脳の主要ブロックの役割
  • パーキンソン病に深くかかわる神経伝達物質「ドパミン」がどこで作られているか


【前回のまとめと今回のテーマ】
前回は、脳からの『動け!』という指令を体に届けるための通り道には『ゲート』があり、その門を開ける『鍵』の役割をドパミンが担っていること、パーキンソン病はこのドパミンが不足して脳からの指令がスムーズに伝わらなくなる病気であること、を確認しました。

今回は、指令の出発点となる大脳の各ブロックや、実際にドパミンを生成する中脳、そして生命維持を司る脳幹など、脳の「表層」と「深部」にある各部位の名称とその具体的な機能について見ていきましょう。

前回『体を動かすにはドパミンが大事』って教わったけど、そもそも僕たちが体を動かすとき、脳の中では何が起きてるの?
いい質問だね。
私たちが当たり前のように見て、感じて、動くことができるのは、脳の中で、ものすごいスピードで情報のリレーが行われているからなんだ。
脳の中のただ一つの場所が命令しているんじゃなくて、いろんなところが協力して『動け!』という最終的なアクションを作っているのよ。
その通り。まずは、脳の中にどんな部位があるのか、脳内マップを見てみよう。

脳の表層のパーツと役割(表層マップ)

私たちの脳は、役割ごとにブロックに分かれ、巨大なネットワークを形成しています。まず脳の表層を見てみます。

大脳:思考・戦略の情報処理センター

大脳の表面は、大脳皮質だいのうひしつと呼ばれる、厚さわずか数ミリの薄い神経細胞の層で覆われています。この薄い表層に膨大な数の神経細胞(ニューロン)がぎっしりと敷き詰められており、人間が計算や判断、戦略を立てたりするための高度な処理を行う『情報処理センター』として機能しています。

大脳皮質は大きく4つのブロック(葉)に分かれています。

  • 前頭葉ぜんとうよう:作戦を練り発令する「司令塔」
    他のブロックから届いた情報をまとめ、「こんな動きはどうだろう?」といくつもの運動の作戦案を作成し指令を出します。
  • 側頭葉そくとうよう: 知識・経験の「データベース」
    運動計画を立てる時に参照すべき、過去の経験や知識を蓄積しています。
    ※音や言語を理解する働きにも関わります
  • 後頭葉こうとうよう: 映像を解析する「モニター」
    目から入った情報を処理し、形や色、大きさを正しく把握します。
  • 頭頂葉とうちょうよう: 空間を測る「ナビゲーター」
    「目に見える景色」と「手足の感覚」を合体させて、頭の中に立体的な地図を作ります。周りの物と自分との距離感を正確に計算します。

小脳:動きを滑らかに整える調整役

小脳は、動きの細かな調整を行う「運動の調整センター」として働いています。大脳から送られてくる「こう動きたい」という運動計画と、目・内耳・筋肉などから送られてくる実際の体の状態を常に照らし合わせ、そのズレを瞬時に修正することで、滑らかで正確な動きを実現しています。

※小脳は過去に「どう動いたら成功したか」という経験値を提供し、より精度の高い運動計画を大脳で完成させるための手助けもしています。

脳幹のうかん:生命維持の運営と反射行動

呼吸、心拍、血圧の調節などの生命維持活動、無意識に体のバランスを保つ姿勢反射や、眼球の動き、飲み込み(嚥下)、咳などの反射行動の制御を行っています。

大脳と小脳って聞いたことはあるな。
さっき話してた『ドパミン』はどっちで作られてるの?
どちらでもないの。今見ていたのは脳の表層で、『ドパミン』は脳のもっと奥で作られているのよ。
大脳・小脳は、考えたり細かい動きの調整をしていたけど、
脳の奥の方では、意識しなくても体が勝手にやってくれる大事な働きを受け持つものが多いの。例えば、

  • 生命維持に必要な体内の働き:呼吸や心臓のリズム、水分調整など
  • 反射的な動作:熱いものを触ったら手を引く、目や頭を素早く向けるといった動作
  • 無意識でできる動作:箸を使う、字を書くといった、何度も練習して身に着けた動作。

といったようなものがあるかな。

それじゃあ、ちょっと脳の断面図を見てみよう。役割ごとに、大きく3つのブロックに分かれているのがわかるかな?

脳の内部構造と役割(断面マップ)

脳の深部には、本能や生命維持、情報の交通整理を司る重要なパーツが密集しています。

大脳の深部:動きの選択・情動の源

  • 大脳辺縁系だいのうへんえんけい:感情と意欲のエンジン
    喜怒哀楽などの感情を生み出し行動の「やる気」を支えます。
  • 線条体せんじょうたい:動きの選択
    前頭葉が出した複数の動きの案の中から、今やるべき「採用案」を選び出します。
  • 淡蒼球たんそうきゅう:運動のブレーキ
    過剰な動きを抑制し、精密な動作を行えるよう調節します。

間脳かんのう:生命維持の司令塔

  • 視床ししょう:感覚の中継基地
    嗅覚以外のあらゆる感覚情報を大脳へ振り分ける脳内の「窓口」です。
  • 視床下核ししょうかかく:ブレーキの増幅担当
    淡蒼球に対して「もっと強くブレーキをかけろ!」と指令(興奮性)を送ります。これにより、急に動きを止めたり、複雑な動きを制御したりします。
  • 視床下部ししょうかぶ:生命維持のための体調監視・指令
    体温、睡眠、水分量などを常に監視し、脳下垂体・脳幹(延髄)などに指示を送り、体調を維持します。
  • 脳下垂体のうかすいたい:ホルモン工場
    視床下部の命令を受け、成長や代謝に必要な化学物質(ホルモン)を全身へ届けます。

脳幹のうかん:生命維持の運営と反射行動

  • 中脳ちゅうのう:体の自動制御とドパミンの生成
    眼球運動の制御や、視覚・聴覚の反射、姿勢の保持、ドパミンを生成・放出する機能を持ちます。
  • きょう:小脳への懸け橋
    大脳から送られた運動命令を小脳へ中継し、動きの微調整を促します。
  • 延髄えんずい:生命維持の運営
    呼吸・血圧・心拍など、意識しなくても止まってはいけない活動を制御します。

うわあ、たくさんあるんだね。これが全部、いっぺんに働いてるの?
そうだよ。これらは別々に動いているんじゃなくて、実は『強力なチーム』として、高速で情報をやり取りし常に連動しているんだ。
それぞれの担当が勝手に動いてるんじゃなくて、チームプレーだったんだね!
どんなふうに連携しているのか、気になるなあ。
じゃあ、次はこのチームプレーについて見ていこう。

ポイント:脳の内部構造と役割

サマリ装飾イラスト

  • 戦略を組み立てる「表層」と、生命活動を支える「深部」
    脳の表層は、視覚や感覚などの情報を統合し、最適な動きの計画を立てることが主要な働きです。対して脳の深部は、生命維持や動作の自動制御、ドパミンの生成など、意識にのぼらない領域で心身を根本から支えています。
  • 脳の主要ブロックと役割
    ・大脳の表層(大脳皮質):思考・戦略の情報処理センター
    ・大脳の深部:動きの選択・情動(感情・意欲)の源
    ・小脳:動きを滑らかに整える調整役
    間脳かんのう:生命維持の司令塔
    脳幹のうかん:生命維持の運営
  • 中脳におけるドパミン生成
    運動の調節に不可欠なドパミンは、脳幹の中の「中脳」で生成されます。
※本サイトは情報提供を目的としています。実際の診断や治療は専門の医療機関にご相談下さい。

参考文献 (References)

  1. 脳科学辞典
  2. 解剖学.jp

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