リハビリテーション
~ もう一つの治療の柱 ~
この記事でわかること
- リハビリの開始は早ければ早いほど良い。
- パーキンソン病で起こりやすい悪循環:動きにくい → 動かない → 更に動けなくなる』
- 日常生活を支える3つのリハビリ領域(理学療法・作業療法・言語聴覚療法)の役割。
【前回のまとめと今回のテーマ】
前回は、飲み薬だけではパーキンソン病の症状の調整が難しくなった際の治療の選択肢の1つである「デバイス補助療法(DAT)」について確認しました。
しかし、お薬やデバイス補助療法を駆使したとしても、それだけで「動ける体」を維持できるわけではありません。
今回は、全てのパーキンソン病患者さんにとって不可欠な「リハビリテーション」について、その内容を見ていきましょう。
パーキンソン病では、「動きにくいから動かない」
→「動かないから更に動けなくなる」という悪循環が起きやすいんだよ。
ええ。
だから、病気の進み具合に関わらず、全ての患者さんにとってリハビリは欠かせないものなの。
『リハビリ=辛いことを頑張る』というイメージを持ってしまう人も多いよね。
『毎日を安全に』、『その人らしく過ごせる』、
そんな日々を一日でも長く維持するために行うものなんだよ。
だから、無理をして頑張るよりも、その日の体調に合わせて、続けられることをコツコツ続けていくことが何より大切なんだ。
パーキンソン病のリハビリの目的
パーキンソン病のリハビリでは、今の体の機能をできるだけ活かしながら、自分でできることを維持し、日々の生活を豊かに過ごすことが、多くの患者さんに共通する目標となっています。
そのため、リハビリでは次のような点が意識されています。
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「使わないことで衰える」を防ぐ:
動かない時間が増えると、筋力・持久力・柔軟性が低下し、更に動きにくくなります。
リハビリにより、その悪循環を断ち切ることを目指します。 -
日常生活動作(ADL)の動きやすさを維持する:
歩く、立つ、振り向く、食事をするなど、日常生活に必要な動作(ADL)を維持することを目指します。 -
自分らしい生活(QOL)を保つ:
すべてを完璧にできなくても、「自分らしく、納得のいく暮らし」を少しでも長く続けることを大切にします。
リハビリの3本の柱
お薬の治療と並行して、診断された直後から早期・継続的にリハビリを行うことが、身体機能の低下を緩やかにし、体を動かしやすい状態に保つために極めて重要です。リハビリには、それぞれ異なる役割を持った3つの専門分野(柱)があります。
身体の基本動作をケアする理学療法
寝返りを打つ、起き上がる、立ち上がる、座る、あるいは歩くといった、日常生活のベースとなる「基本動作」の能力を維持・向上させるためのリハビリです。安全に動ける範囲を広げ、転倒を予防し、体力を維持することを目的としています。
リハビリの事例を紹介します。
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基本動作の練習:
ベッドからの起き上がりや、椅子からの立ち上がりなど、重心の移動を意識したスムーズな身のこなしを練習します。
また、患者さんの状態に応じて、バランスを崩した際に転倒を防ぐため、一歩踏み出して体勢を立て直す練習も行います。 -
歩行・方向転換の訓練:
歩幅を大きく保つ練習や、バランスを崩しやすい方向転換を安全に行うコツを身につけます。
必要に応じて、歩幅に合わせ床にテープを張ったり、メトロノームで一定のリズムを与えたりするなど、外からの視覚的・聴覚的な合図を活用して、足がすくむのを防ぐ練習も行います。 -
関節のストレッチと筋力維持:
パーキンソン病特有の「体のこわばり」をやわらげるために、首・肩・背中・手足の関節をゆっくり大きく動かすストレッチを行います。
また、姿勢をまっすぐに保つために、体幹や脚の筋肉を使った立位保持や軽い筋力トレーニング(例:かかと上げやミニ・スクワットなど)を行い、姿勢維持に必要な筋力の維持を目指します。 -
全身の持久力トレーニング:
疲れにくい体を保つため、ウォーキングや固定式自転車(エルゴメーター)などの有酸素運動を行います。
日常の生活の動作をケアする作業療法
着替え、食事、トイレ、趣味など、日々の活動を安全に続けるためのリハビリです。
単なる体の訓練だけでなく、便利な道具(福祉用具)の活用や、手すりの設置といった「生活環境の調整」も組み合わせて、トータルで暮らしやすさをサポートします。
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生活動作の再学習と工夫:
着替えやボタン留め、入浴などの日常生活動作について、
体の動かし方や手順を工夫しながら、できるだけ負担が少なく、
安全に行える方法を身につけていきます。 -
福祉用具の活用:
太くて持ちやすいスプーンや滑り止めのついた食器、
靴下を履きやすくする補助具などを活用し、
難しくなった動作を補いながら、自立した生活を支えます。 -
生活環境の工夫:
住宅内の動線上への手すりの設置や段差の解消、滑りやすい場所への対策などを行い、
転倒などのリスクを減らしながら、安全に生活できる環境を整えます。
「話す・食べる」をケアする言語療法
パーキンソン病の進行に伴って現れやすい、声の小ささや話しにくさ、飲み込みにくさ(むせ)に対して、
「話す機能」、「安全に食べる機能」を維持するためのリハビリです。
コミュニケーションを続けることや、誤嚥(ごえん)による肺炎を予防しながら、
日常生活の中で安心して会話や食事ができる状態を目指します。
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声と発声の維持:
声を出す大きさや息の使い方を意識しながら、
はっきりとした声で相手に伝わる発声を維持していきます。 -
口や喉の動きの維持:
唇・舌・喉などの動きを保つための体操を行い、
話すことや飲み込む動作がスムーズに行える状態を維持します。 -
安全に食べるための工夫:
姿勢の調整や一口量の工夫、食べやすい食品の選び方などを通して、
むせを減らし、安全に食事ができる方法を身につけます。
パーキンソン病の症状に即した対策
パーキンソン病のリハビリでは、ただ体を動かすだけでなく、「病気のメカニズム(原因)に合わせた対策」を取り入れることが大きな鍵となります。以下に、対策事例を紹介します。
無意識の動作が難しくなる
パーキンソン病ではドパミン不足によって、大脳基底核が担う「運動の自動化」が苦手になります。
そのため、「普通に歩く」「自然に腕を振る」といった無意識の動作が、小さく・止まりやすくなります。
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『自動運動』から『意識的な運動』へ:
パーキンソン病では、無意識に自然に動くことが難しくなるため、
・「大きく足を出す」
・「腕を大きく振る」
・「背筋を伸ばす」など、意識して動作を大きくする練習を行います。
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外部からのサイン(目印)を活用する:
脳の内部で運動のタイミングやリズムを作ることが難しくなるため、
・床のラインを目で見てまたぐ(視覚)
・メトロノームの音に合わせる(聴覚)
・音楽のリズムに合わせて歩く(聴覚)など、外からサインを与えます。これらを目印にすると、「大脳基底核ループ」の代わりに脳内の別ルートが働き、すくんでいた動きをスムーズに行える可能性があります。
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意識して繰り返し練習する:
「頭で考えて動く」という意識的な練習を何度も反復することで、脳内で大脳基底核を迂回する代償的ネットワークが育ち、考え込まずとも体をすっと動かすことができるようになる可能性があります。
つまり、パーキンソン病のリハビリでは、
うまく働かなくなった無意識の自動運動システムを、意識的なコントロールや外部刺激による「バイパス回路」へと切り替え、繰り返し鍛えていく
ことが重要になります。
筋強剛
筋強剛はパーキンソン病でよく見られる「持続的な筋のこわばり」です。
そのため、首や肩がこわばる、腕が振りにくい、体が丸まりやすいといった日常の不自由さが生じます。
ここでは、筋強剛の特徴とその特徴に応じた対策をまとめます。
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筋緊張により関節の可動域が狭くなることへの対応
- 可動域を守るための「ゆっくりとした持続的ストレッチ」を行います。
- 理学療法士の元でのリハビリでは、関節を動かす手技を施してもらい可動域を戻します。
- 意図的に「大きく・ゆっくり・正確に」体を動かす練習をします。
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活動量の低下により筋力が低下することへの対応
- 機能維持のための低負荷筋力トレーニングを行います。
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薬効による日内変動があることへの対応
- 筋肉がこわばっている時に体を動かしても可動域を広めることが困難です。リハビリは薬が効いている「オン」の時間帯に行います。
※本サイトに掲載しているリハビリメニューは、症状の進行度やバランス能力によって向き不向きがあります。転倒などのリスクを防ぐため、決して自己判断はせず、まずは主治医にご相談いただくか、医療機関や訪問リハビリなどの専門家(理学療法士など)の指導のもとで安全に行ってください。
『動きにくいから動かない』ではなく、『安全に、コツコツ続ける』ことが、とても大切なんだよ。
ポイント:リハビリテーション
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リハビリは『早期開始』が鍵
診断直後から運動療法を始めることで、身体機能の維持だけでなく、脳の活性化(神経可塑性)も期待できます。 -
『動かない悪循環』を防ぐ
パーキンソン病は『動きにくいから動かない→更に動けなくなる』という悪循環に陥りやすい病気です。リハビリはこの負のループを断ち切ります。 -
暮らしを支える『3本の柱』
歩くなどの基本動作を支える『理学療法』、着替えなどの生活動作を支える『作業療法』、会話や食事をスムーズにする『言語聴覚療法』という、いま直面している困りごとや目的に応じて選べる相談先があります。